破産制度を使った簡易な事業再生Q&A

Q1
会社破産ではなく、民事再生を利用したいのですが。

A1
経常利益が黒字で、キャッシュに余裕があるなら可能です。
破産ではなく、民事再生を希望される会社経営者は多いのですが、以下の3要件が必要です。

?会社の営業利益が黒字である。(売り上げの減少、経費の増加から赤字になった場合は、民事再生を選択する余地はない)。
?販売先が消費者相手の会社か、特殊な技術、際立つブランドをもっている。
?再生手続の費用と当面の資金繰りを乗り越えるだけのキャッシュがある。

「破産するより民事再生した方が、より多くの配当を得られる」と数字を説明する程度で、債権者が、民事再生を許すほど、取引社会は甘くはありません。

Q2
事業譲渡をして会社の事業を存続させたいのですが。

A2
適正価格での事業譲渡なら問題ありませんが、不適正なら否認されます。
会社のうち、好調な事業部門を他の会社に売却する場合、企業価値に見合った適正価格なら問題ありません。
この場合の企業価値は、「事業のつぶし値段」+「利益の1~5年分」で計算することが多いのですが、明確に企業価値はいくらと決めることはできません。価格が相当でないと管財人から否認されます。多くの場合は、破産手続き後、管財人に事業譲渡をゆだねた方が安全です。
どうしても破産前に事業譲渡したいときは、公認会計士の鑑定書等を添付する必要があります。

Q3
否認されない事業譲渡はありますか

A3
財産を移さず人脈やノウハウを移して新たに企業を設立すれば問題ありません。
経営者や従業員の人脈、専門技術、経験、顧客や取引先からの信頼、そういうものは、破産で失うことはありません。財産を移さず、新会社を設立し、そこで経営者や従業員の人脈、専門技術、経験、顧客や取引先からの信頼を利用して新規に事業を開始すれば、問題ありません。
ただし、この方法は、従来の得意先や仕入れ先と、強い信頼関係を築いている場合で、しかも、主にサービスとか技術を売り物にしている業種に限られます。
また、新組織は、対外的にも対内的に、別の企業であることが明確に認識できなければなりません。場所、名称を全く異にし、顧客や取引先にも、新組織であることを告げる必用があります。そのためには、新会社をつくるだけでなく、旧会社を破産という法的手続で精算する必用があります。東京地裁平成27年10月2日判決は、?会社の取締役や、従業員は同一であり、事務所も同じビルで、顧客や取引先もほぼ同一であること?商号は、同一ではないが、通称を使用していること。?取引先も同一と誤認しており、別会社であることを説明していないことから、会社法22条1項の類推適用により新会社に旧会社の債務を負担させています。

Q4
企業再生の専門家という方から、会社分割による事業再生を勧められたのですが。

A4
多くの場合、問題ある方法です。
会社法上の企業分割制度を悪用して、借金は、そのままにして、会社の財産をそっくり新会社に移す方法が行われています。しかし、これらは、新会社法では否認の対象になり、刑事的にも問題が生じます。改正会社法は、この種の企業分割を禁止しています。こういう問題ある企業分割に加担する弁護士もいます。
もちろん、合法的な企業分割もありますが、必ず、信頼できる弁護士に相談してください。